シーズン始まりましておめでとうございます。
ついにこの日がやって参りました。味見収穫も早々に、明後日11月24日より初出荷でございます。
味見の日々は長く続きませんでした。倍々ゲームで増えていき、今日は2パック。帰りの駐車場で一緒になったアパートのご近所さん。最近お子さんが産まれたお祝いも込めてひとパックお渡しして、今夜もイチゴ祭りしました。
かおりのは相変わらずの甘さ。子どもたちはこっちの方が好きみたい。大人には少し酸味が足りないかなぁ。でもこの時期のかおりのはバランスも取れていてなかなかよろしいです。
そしてさちのか。まだこちらは2粒。かおりのよりも赤が濃くて、ちょっとゴツゴツ。でもそれがまたなんとも愛いやつめ。
奥さんが一つ食べるとすんごく甘くてコクがあって、さすがさちのか!!って具合で。僕のは一応糖度計で測りました。その結果先端12.9度、先端を除いた下の部分で10.1度。この時期にしてはまあまあかな、という感じですが、切った残りの半分を食べるとちょっと酸味が強いか?でもそれでもこの数字なら納得です。個体差があるので、奥さんのはもっと数字が高かったかもしれません。
予約販売はもう少し先ですが、イチゴは日々成長し色付き、着実にその数を増やしています。
予定では12月の4~5日あたりから、さちのかは出荷始めになる予想ですが、直売の受け付け開始も年末よりも早まるかもしれません。クリスマス時期にお世話になっているケーキ屋さんの力に何とかなりたいと思っているので、その時期だけお休みしたとしても、それ以外はいつもよりも早く皆さんの口に入るのではないかと期待しています。
今日はここからさらに続きます。お時間に余裕のある方はお付き合いくださいませ。かなり長いですが、とても切実な話です。
少し危険な橋を渡ります。農協さんや他の生産者さん、市場の方々に見られるといろいろと問題があるかもしれませんが、あえて僕はきちんと書きたい。大切なことだから。みんなのためだから。いや、自分のためかな。
皆さんは普段イチゴをどこで購入されていますか?
スーパーさんですか?直売所ですか?
結論から書きます。どの野菜もそうかもしれないですけど、できればイチゴは農家さんから直接買っていただきたい。もっと強く言うならば、スーパーなどに「無造作に」置いてあるイチゴは絶対に手に取ってはダメです。
イチゴを選ぶ基準はいくつかあります。味が良いか。値段が安いか高いか。安心安全か。これらについては正直、なかなか農家の現状以上のレベルアップは望めません。イチゴ作りは簡単ではありませんし、お値段もおいそれと半額にしたりできません。イチゴ栽培は病害虫との戦いですので、無農薬・減農薬はとても困難です。
しかし、できることをやらないというのは怠慢です。あってはならない。
農家以外でイチゴを購入するリスク。それは鮮度です。「そんなの知ってる」と言われるかもしれない。でも現在の農家事情、農協事情、販売ルート事情を考えたとき、その一言で片づけてはいけない事態まで来ているのです。
農家は流せる限りの心血を注いでイチゴ作りをしています。しかし市場で取引されたあと、もっと直接的に言えば1キロいくらと値段が付いた後、自分のイチゴがどのように扱われているか、買われているか、食べられているかにあまりに無関心です。農協や市場関係者もそうです。イチゴが右から流れてきて左に流すまでの間、イチゴは大切に扱われますが、一度自分の手から離れてしまうと途端に「オレ、知らんけんね」となります。スーパーだってそうです。僕がよく行くスーパーさんでは5月の暑い中、店外のスペースで4パック入りの段ボールに入ったイチゴが日中山積みにされたままです。あれだけ農家がやってる冷蔵保存ってなんだ?
なぜこのようなことが起こるのか。
簡単なのです。イチゴを作っているとき、競りにかけているとき、運んでいるとき、売っているとき、何を考えているか。みんなお金のことを考えているのです。「ひとパック今なら450円くらいかなー」「手数料いくらかなー」「売上いくらかなー」です。誰一人「この美味しいイチゴのまま、お客さんの口まで入ればいいなー」なんて考えていないのです。
味などを語る以前の問題です。
農家に限った話をします。
僕は畑で売る農家も市場に出す農家も、直売所で売る農家も、みんな手を繋いで協力し合えればと常々考えています。でもそれはなかなか難しい。それぞれが敵になるからです。自分たちが生き残るには他が潰れてくれなければならない。なぜみんなが勝っちゃいけないんだろう?
だからそのためには旗が必要なのです。みんなが同じ方向を向くための旗です。どんな旗か。これも簡単です。「美味しいイチゴをみんなに食べてほしいね」という旗です。
でもそんな旗は誰も振りたがりません。皆の笑顔や健康や喜びに比べると本当に小さな理由によって、その旗はだらんと力なく垂れさがっているのです。プライド。慣例。小銭。付き合い。めんどくささ。諦め。などなど。
理想的なのは美味しくて安心安全でリーズナブルなお値段で「新鮮な」イチゴが、「どこに行っても」買えるというものです。スーパーでもデパ地下でも直売所でも道の駅でも通販でも。そして特別にこの人から買いたいというイチゴに出会えれば、わざわざ畑にまで来てくださってお話ししながら直接買うのです。
皆さんの近くで売られているイチゴをよく見てください。そのイチゴは本当に597円の価値がありますか?お子さんやお孫さんに食べさせたいと思えるイチゴですか?頑張った自分へのご褒美にしたいイチゴですか?
正直山口県はこのような状況です。ほかの有名産地は知りません。でも私たちが住む山口で美味しいイチゴを食べようと思うと、少なくとも何かひと手間、ちょっと余計に車を走らせたり、ネットで情報を得たり、高いお金を出したりしないと手に入らないのです。
上に書いた理想的な世界を作るのはなかなか難しいです。でも何もしなければ変わりません。
だからこそ本当に買いたいと思えるイチゴを選んで買ってください。そのうちそうでないイチゴを扱う人々は気づくはずです。みなが我々のイチゴを買わなくなった。何が問題なのかと。
かんたまさんはお客さんに畑まで来ていただいたり、イベントで出会ったりしながら、直接目を合わせてイチゴを買っていただくことを最大の目的として頑張っています。しかし、そのほかの販売のされ方がもっとお客さんにとって魅力的なものになることも望んでいます。
だからこそ、私たち農家や農協や市場や小売業者やその他イチゴに関わるすべての人たちの目を覚まさせるために、皆さんには正しい選択をしていただきたいのです。良いものは買う。良くないものは買わない。
山口県のイチゴ農家だって捨てたものじゃありません。お近くに必ず素敵なイチゴ農家がいらっしゃいます。素敵なお店もあります。素晴らしいスーパーさんもあります。多くはないかもしれませんが農家とお客さんがしっかり手を繋げるように汗を流しておられます。ケーキや料理にして身を粉にして奮闘している人もいらっしゃいます。イチゴが皆さんの口にお腹に入るまでの道のりを大切に考えている人が必ずいらっしゃいます。そういう人たちを探し出してください。
皆さんがすぐに探し出せるか、時間と労力がかかるかは、私たちの努力次第です。農家が本来の姿を取り戻せるか。間に入るいくつもの壁が壁でなくなるか。ここが間違っていると口に出せるか。変えていこうよと提案できるか。皆が皆、たった一粒のいちごのために正直になれるか。
とても難しい。かんたまさんはまだ言う7割、行動3割くらいです。でも近くを見渡すといるんです。そういう人が。かっこ悪いけどかっこいい、素敵な人も。
かんたまさんもそんな素敵な農家のひとつになりたいと思っています。
いつかすべてが変わると思います。
かんたまさんも今できることを頑張ります。